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【泉涌寺】《真言宗泉涌寺派総本山》℡075-561-1551

 御寺(みてら)とも呼ばれる真言宗18本山の一つ。寺伝によれば、空海が天長年間(824~34)、ここに草庵を結び、法輪寺としたのが起こり。仙遊寺とも。後、1218年、月輪(がちりん)大師(だいし)が再興、落成の時に泉がわき出たので、泉涌寺に改められた。律を本宗として天台・真言・禅・浄土の()兼学(けんがく)の道場であったが、明治5年に廃止、真言宗を公称する。四条天皇以来14代の天皇陵をはじめ、皇妃、親王陵など25の陵墓がある。

大門 仏殿 楊貴妃観音堂
舎利殿 月輪御陵拝所 本坊・御座所
境内の菊 御座所庭園 御座所庭園

大門[重文] 桃山時代。もと、御所にあったのを下賜されたと伝える。額の「東山」は南宋の書家・(ちょう)(そく)()筆。昔の参道は応仁の乱で荒廃したため、現在の参道が通じたと伝える。珍しい下り参道で、景観は山内随一。

観音堂 (よう)()()観音像[重文]を安置。唐の玄宗(げんそう)皇帝が楊貴妃の冥福を祈るため、その容貌を写して造ったという。香木の寄木造りで、玉眼入、頭部に宝相華唐草模様の透かし彫りの宝冠をいただき、手には極楽の花宝相華を如意型に仕立てたものをもつ。(たん)(かい)和尚が1255年、十六羅漢像とともに宋国から将来する。昭和30年までは、100年に一度のご開帳の秘仏であったが、現在は常時拝することができる。

仏殿[重文] 禅宗様仏殿で土と釘を使っていない総ケヤキ造り。ケヤキは静岡御殿場より切り出したもの。1668年、徳川家綱の再建で、運慶作と伝える釈迦・弥陀・弥勒の三尊を安置。天井の竜は八畳の大きさ幡龍図で狩野探幽筆。また、堂内には、(みょう)()()?(かん)筆、大涅槃図が収蔵。涅槃図は涅槃会の時(3/14~16)、一般公開される。長さ16m、幅8m、160kgで日本最大。

舎利(しゃり)殿(でん) 当寺二世湛海(たんかい)が宋から持ち帰った仏牙(ぶつが)(歯)の舎利を本尊とし、舎利塔に納める。かたわらには甲冑をまとった韋駄天(いだてん)羅刹(らせつ)足疾鬼(そくしつき)に仏舎利を盗まれないように安置されているという。天井の画龍は狩野山雪の筆と伝え、鳴き龍という。拝観不可。

御座所 明治15年の火災の後、明治天皇が旧京都御所の御里御殿を移した。月輪(つきのわ)御陵参拝に天皇・皇妃の休憩所とされた建物で、1855年の建築。内部障壁画は宇喜多一惠作が多い。なお、殿内に敷きつめられた絨毯は皇居当寺のもので、ヨーロッパ製品の良質なものといわれている。海会堂(かいえどう)はもと京都御所の黒戸を移したとつたえ、歴代天皇や皇后の念持仏を安置している。

庭園 月輪御陵の前庭と御座所の庭を兼ねて元禄年間に造られたと伝わる林泉形式の庭で、置かれている雪見灯籠は八角形。仙洞御所より移され光格天皇が好まれたと伝えられる。

(れい)(めい)殿(でん) 明治4年内裏より移築した建物で、四条天皇をはじめ天智天皇以降の歴代天皇、皇后、親王の尊牌を奉納している。

月輪御陵(つきのわごりょう) 四条天皇をはじめ後水尾天皇以降、仁孝天皇に至る天皇・皇妃・親王を奉葬したところで、25陵5灰塚9墓からなる。天皇は九重の層塔、后妃は無縫塔、親王は宝篋印塔。

泉涌水 月輪大師俊?(しゅんじょう)が当寺造営のとき、崖下から涌出したとつたえる井泉。井泉を覆う建物は寛文年間(1661~73)の建造。

清少納言(せいしょうなごん)歌碑 一条天皇中宮定子の鳥戸野陵に近い月輪に隠棲したという伝承によって建てられた。「夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ」

泉涌寺と皇室 昭和22年5月3日新憲法が制定されるや、国家機関としての宮内省が直接神社仏閣に資を供することを禁止されることとなったため、壇信徒を持たない皇室一筋の寺門の維持は極めて困難な事態に追い込まれるようになった。ただ、わずかに天皇ご内廷の私費の下賜が唯一のよりどころであった。この時、宗教法人解脱会は、故会長岡野聖憲師の意志を体して、霊明殿尊儀への奉仕と御寺の維持興隆に協力することとなり、これは現在もなお継続されている。しかし、時代の変動につれて、御下賜金と解脱会の奉納金だけで御寺を維持することは、とうてい出来なくなってきた。ここにおいて寺門運営の基礎を強固にし、永続を図るために昭和41年三笠宮崇仁親王を総裁に仰ぎ、三井銀行故佐藤喜一郎氏を会長として広く民間篤志のもと糾合して「御寺泉涌寺を護る会」が結成された。現在では、秋篠宮文仁親王殿下を総裁に、前経団連会長・新日鐵相談役会長斉藤英四郎氏を会長として、開創以来750年の伝統と由緒をもつ、格式の高い御寺維持のための努力が今も力強く続けられている。

参考資料 昭和京都都名所図会 竹村俊則著より

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