【日本酒】について
月桂冠大倉記念館 |
三輪明神の酒林(さかばやし) |
酒の水の井戸 |
酒蔵 |
月桂樹 |
両口の銚子 |
猪口付き壜 |
徳利 |
菰樽(こもだる) |
◆日本酒の始まり
古代エジプトや中国における酒の歴史から比べると大変に新しく、日本では『日本書紀』にやまたの大蛇を退治するくだりで酒がはじめて登場する。日本の酒は、はじめから麹を使って造られてものではなく、『古事記』には米を嚼んで酒を造ったとあり、口かみの酒が日本の酒の原型であったという説が有力。「酒を醸す」は「嚼(か)むす」に由来している。その後、噛んで造った不味い酒に代わって、帰化人たちが麹の応用という画期的な手法で、日本酒が発展してきたものと思われる。
◆処女が噛んだ酒はうまい!
古くは清浄な処女が米を噛み、器に吐き出して、酒をつくった。女をカミさんとかオカミさんと呼ぶのも、この「かむ」からきたという。また、酒は「キ」とも読み、キサキ(后)は「酒栄き」から出た言葉で、良酒ができることを祈る意があった。このように、酒造りは、女性、特に処女の専売特許といってよい傾向にあったようだ。
◆酒の語源は『栄え』
古代の人々が神前に酒を供え、種族繁栄や五穀豊饒を願い、人々の『さかえ』あらんことを祈ったことは、想像するまでもなく、酒は『さかえ』→『さけ』と呼ばれるようになったものと思われる。また、「御酒」「神酒」などのような「キ」は「気」「不思議」からという説があって、酔う気分を不思議とした。それに加えて、「キ」は「血」「乳」に通じるもので、精気の含んだ液のこと。
◆血から酒の儀式へ
酒を飲むことによって起こる陶酔感は、他の多くの現象を超越するほどの神秘としてとらえられ、神→宗教的儀礼→酒という関係を結び付かせた。その酒の原料である米は、神に五穀豊饒を祈る日本人の信仰そのものであり、その米から酒が「偶然」につくられたことは、神秘的でかつ不思議というほかはなく、酒が宗教的儀礼、祭、祝いごとに欠かせぬものとなったのは必然であると思われる。狩猟時代に神へのお供え物として、生贄や血をそそぐ風習は、農耕時代に入って血による儀式を捨てて、酒による儀式にかわったといわれている。
◆酒の代表的な神々
酒神を祀る神社としては、三輪神社(奈良)、梅宮大社、松尾大社の三社が由緒ある代表格といえ、また、その神々は出雲、飛鳥、太秦という地域を中心とした帰化人たちが酒造りにかかわっていたことを物語る。
【三輪神社】酒神としては、神々の系譜の上から、また、神社としてもっとも古く、大物主(大国主命)と少名彦名尊が祭神である。
【梅宮大社】美人の名の高い神、木花開耶姫(瓊瓊杵尊の妃)と父である大山祇神と子の彦火火出見尊が祭神である。
【松尾大社】須佐之男尊の口から吐き出されたといわれる市杵島毘売尊と、大国主命の子の大山咋尊を祭神として祀り、今日では酒の神様の代表格とされ、酒造家の信仰があつい。(もともとの祭神は秦酒公といわれている)
◆酒蔵の杉玉は!
杉玉は酒林といって、「うま酒の三輪」があるという意味。初めのうちは、杉の葉を無造作に束ねたもので、今のような形になったのは、江戸時代中頃。酒林の由来は、酒神の代表格である三輪神社の御神体が、杉でおおわれた三輪山であり、また、境内にある神木(二俣杉)が信仰の対象となったもの。その三輪神社での酒祭りの際、蔵元の杜氏たちが、この祭りに集まって醸造の安全を祈り、お守りの護符と神社で作った杉玉を受けて帰ったもの。
◆庶民の酒は京都から
室町時代、神人と称する、寺院神社の特権のある人々に独占されていた酒造が、課税を条件として一般に許され、大醸造家が現れ始めた。京都の柳屋などはその代表で、酒の異名としての「柳」という言葉や、「柳樽」の名など今日まで残すほど栄えた。庶民の酒造業は、京都がその発祥だといってよい。
◆清酒の誕生!鴻池の宣伝
日本酒は江戸初期に入ってもあら濾しした薄濁の酒や濁酒が一般的であったが、摂津の国、鴻池の山中勝庵(鴻池財閥の祖先)が酒に灰を入れ、酒を澄まし、清酒にして儲けたといわれている。清酒の誕生は、鴻池の主人に遺恨をもった使用人がある夜、腹いせに酒樽の中に木灰を投げ込んで逃亡した。ところが翌朝この樽の蓋を取ってみると、濁酒が奇麗に澄んで、しかも味のよい酒になっていたという。が、しかし、飛鳥、奈良時代にはすでに清酒はあったようで、上記の話は眉唾であり、酒を売るための一種の宣伝と考えられる。
◆奈良漬け
桃山時代に酒造技術もいちだんと進み、酒も澄み、酒粕を利用して専業の漬物屋が奈良で起こった。奈良漬けである。ただ、このころ酒を澄ますのに灰を使っていたので、粕も酒も旨くなかったが、後、灰を使わないで澄ます方法が生み出され粕も酒も旨くなった。天野酒、奈良酒であり、その旨い酒粕を使ったことが、奈良漬けを今日のように有名にした。
◆酒の肴
酒の肴という時の「さかな」は「酒菜」であって、「飯菜」即ち、おばんざいに対応する。上方風と江戸風の料理の味付けが違うのは、一説に酒のせいではといわれている。江戸では上方の酒を口にするには、2週間以上かかった。その間、樽に入っている酒は木香が強くなってしまう。その酒を飲むために、江戸風の料理の味付けがこってりとしているといわれている。上方は木香の強くない新しい酒を口にすることが出来たせいで、料理が淡泊だといわれている。現在でも樽酒は予約しかなく、詰められてから、一週間以内に飲まなければ味が変わる。
◆爵位は酒の器から
爵とは中国の王室で宗廟を祀る時に酒を入れた器であり、その折りに功臣にこの酒を与えたが、のち器(爵)ごと与えたことが、爵位の起こりである。
◆徳利・銚子の混同
「とっくり」は室町中期からこの名が見られ、備前焼で作られたものが多く、備前焼は安価で堅固であるところから、徳利であるという意味で名付けられたといわれている。また、銚子は酒を杯に注ぐための長い柄がついた器で、室町後期に現れた徳利が、酒器として常用されるようになると、正式の酒宴(婚礼や儀式)のみ使用されるようになった。徳利を「ちょうし」と呼ぶのは、かつて、銚子が酒器の代名詞となるほど普及していたためである。
◆今日の酒造メーカーの酒
先年まで酒造米は政府の統制下にあり、酒造権利(株)で決められた以上の酒の自醸できなかった。灘、伏見に限らず、大手と呼ばれる酒造業者は、自ら造る酒では間に合わず、地方の酒を桶買いして、また、醸造アルコールなどと、ブレンドして品質の安定をはかり、計画的に行っているのが現状で、灘物とか、伏見の酒だとか、いい切れない面がある。灘、伏見の酒の違いは、特別な高級酒のみ、その特徴を残していくことになり、我々が飲む酒では、ほとんど変わらない。
◆伏見の酒
伏見の酒の起源は定かではないが、秀吉が伏見城を築き、城下町ができるにおよんで、ようやく酒の需要が高まった。しかし、伏見の酒造業は、全国的にはそれほどの勢力ではなく、江戸時代までは地酒の地位にとどまっていた。明治になり東海道本線の開通により、伏見の酒造家たちは、いちはやく東京市場への売り込みに努力した。明治44年、全国清酒品評会において、伏見酒28銘柄のうち、23銘柄が入賞をはたし、なかでも、「月桂冠」が最優秀賞を得てから、伏見の酒は灘酒、奈良酒などの一流銘柄の仲間入りすることとなった。平成3年全国の出荷量の内、伏見の酒は12%、灘の酒は14%。
◆大倉酒造(月桂冠)の功績
大倉家11代当主・恒吉、木村清助らは、東海道本線開通後、いちはやく東京方面への販路開拓を始めた。また、伏見酒造組合を結成し、伏見の酒の品質の向上をはかり、経験と勘だけに頼っていた酒造りに科学を導入、技術者や杜氏たちの努力によって、前項目にある全国清酒品評会で伏見の酒は輝かしい成績をおさめその名声は全国に広まった。昭和36年、月桂冠は、江戸時代以来つづいた冬季だけの「寒造り」から近代的な「四季醸造」への道へと、業界のトップを切り、また、杜氏・蔵人による一季醸造から社員による年間醸造へと一大転換をはかった。現在の伏見の酒は、大倉酒造(月桂冠)とともに歩んできたといってよい。
◆軍部に勝った伏見の酒!
伏見とは、伏水という意味で豊かな地下水をあらわしている。伏見の酒はその旨い水から造られる。その地下水に危機がおこった。昭和3年、昭和天皇即位の御大典が御所で行われることになり、京都に集まる大勢の人々を奈良へも誘うべく、奈良電鉄が計画された。ところが、軍部は伏見の町の北部にある練兵場を地下鉄にして潜ることを要求した。伏見の酒造界は地下水脈が絶たれると立ち上がって反対した。結局、軍部は伏見の酒造界の意見を聞き、計画の変更に同意したという。世間の人々は帝国陸軍に勝てるのは伏見の酒だけと感嘆したという。
◆日本酒の種類
《法定表示》
【吟醸酒】60%以下の精米歩合で、吟醸造りという低温でゆっくり発酵させる製法で造り上げたお酒。特有の芳香(吟醸香)を持ち、素材の持ち味を生かした魚介料理など、あっさりした食べ物が合う。
大吟醸酒 →米 米こうじ 醸造アルコール 50%以下の精米歩合
純米大吟醸酒 →米 米こうじ 50%以下 〃
吟醸酒 →米 米こうじ 醸造アルコール 60%以下 〃
純米吟醸酒 →米 米こうじ 60%以下 〃
【純米酒】お米だけを原料に造られる混ざりものなしのお酒。良質の純米酒は深い香りと上品な喉越しを持ち、かんで飲むと味わいが増すものもある。コクがあり、少々こってりとした料理が合う。
特別純米酒 →米 米こうじ 60%以下の精米歩合
純米酒 →米 米こうじ 70%以下 〃
【本醸造酒】70%以下の精米歩合で造られ、醸造アルコール(25%程度)を添加したもの。値段も手頃で、冷やでも燗でもおいしい。
特別本醸造酒 →米 米こうじ 醸造アルコール 60%以下の精米歩合
本醸造酒 →米 米こうじ 醸造アルコール 70%以下 〃
【普通酒】本醸造酒よりも醸造アルコールの添加が多い(約25〜44%)。また、糖類や酸味料などを添加したものも含まれる。最も一般的な酒。
《その他の表示》
【山廃】山卸廃止の略。お酒を造るうえで『山卸』という作業をしないで造られた酒。本当の山廃酒は非常に幅と厚味、深みのある味
【生酒】全く火入れ(二度の過熱殺菌をすること)をしていない酒味は若竹のような香りがあり、若く荒々しく冷やで飲む
【生詰】二度の火入れのうち、一回目だけの火入れをおこなった酒
【生貯蔵】二度の火入れのうち、二回目だけの火入れをおこなった酒
【冷酒】このような酒はなく、冷やして飲めば、みんな冷酒
【原酒】搾った後、アルコール度数の調整の水を加えていないだけの酒
【古酒】長期間熟成させ、独特の味を出した酒。とろっとして老酒の香り
【にごり酒】発酵完了直前の甘みの強いもろみをそのまま荒ごしした酒
【雫酒】酒の搾り方で、搾るというより袋からしたたり落としてできた酒
【樽酒】木製の樽で貯蔵して、木香のついた酒
【生一本】単一酒蔵で造った純米酒
【手造り】伝統的な製造方法で造った酒
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